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SNS広告を2ヶ月配信することで若年層との接点を強化した官公庁

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海上保安庁海上保安庁

海上における治安の維持、人命救助、海洋環境の保全、そして船舶の安全な航行の確保など、日本の領海や排他的経済水域を24時間365日体制で守り続けている海上保安庁様。

国民の安全・安心を支える重要な任務であり、厳しい自然環境の中でも的確な判断力と高い専門性が求められる仕事です。

近年、採用市場は「買い手市場」から「売り手市場」へと変化しており、多くの企業や団体が人手不足という課題に直面しています。

特に若年層の労働人口の減少や職業選択の多様化により、従来の採用手法だけでは求職者に十分なアプローチができないケースも増えてきており、より柔軟で多様なチャネルを活用した採用活動をおこなうためにSNS広告などのデジタル施策が注目されています。

今回は新たな海上保安官の採用募集のために広告動画を広めたいという想いから、海上保安庁様のYouTube・Instagram広告の運用をさせていただくことになりました。

「SNS広告を用いて採用活動を強化したい」
「求職者への認知を図りたい」

とお考えの方は、本記事でSNS広告を使った採用活動について、SNS広告を活用する際の注意点などをまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

採用活動の現状

企業の生存戦略として大きく変わりつつある採用活動の現状について解説します。

1. 人口減少による採用難易度の上昇

日本は今、少子化による人口減少という構造的な課題に直面しており、あらゆる業界において「人材確保」が深刻な経営課題となっています。

働き手の不足は、企業や公的機関の事業継続やサービス水準の維持に直結し、「採用できないこと」が事業戦略上の大きなリスクとみなされる時代に突入しました。

少子化は今後も加速していくと見られており、特に生産年齢人口にあたる15~64歳の層は、減少ペースが顕著です。

日本の人口減少のグラフ

(参考:人口減少社会への対応と人手不足の下での企業の人材確保に向けて – 厚生労働省

2. SNS広告による採用への注目

採用の主な方法としては下記のとおりです。

  • 求人媒体への掲載(リクナビ、マイナビ、doda など)
  • ハローワーク
  • 人材紹介(エージェント)
  • ダイレクトリクルーティング(ビズリーチ、LinkedIn、YOUTRUST など)
  • SNS採用(Instagram、YouTube、X など)
  • 社員紹介(リファラル採用)
  • 採用イベント・合同説明会・学校訪問
  • 自社採用サイト・オウンドメディア
  • インターンシップ採用
  • アルバイト・契約社員からの登用(登用型採用)

リクナビやマイナビといったナビ媒体に求人情報を掲載すれば、一定の応募数が見込める時代もありましたが、現在ではこれらの掲載型メディアにおいては露出が広告枠の単価に左右される構造となっており、予算の限られた中小企業や公的団体にとっては、情報が埋もれてしまう現実があります。

そこで注目されているのが、SNS広告を活用した採用マーケティングです。

今やSNSは全世代に利用が広がっていますが、主な採用対象となる若年層(10代~30代)ほど利用時間が長くなる傾向があり、特に20代では平均して休日に1時間30分以上SNSを利用しているというデータがあります。

コミュニケーション系メディアの平均利用時間の図

(参考:令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書

SNSに広告を出すことによって、従来のメディアでは届けられなかった層にまで積極的にアプローチすることが可能になります。

SNS広告の強みは下記の3点です。

  • 埋もれない認知形成:SNS上で日常的に目にする場所へ直接アプローチすることで求人を探していない層=潜在層にもリーチできる
  • ビジュアルで伝える職場のリアル:SNS広告では動画や写真を活用できるため、職場の雰囲気や人間関係、働く姿などを視覚的に伝えることが可能
  • 高速PDCAを実現する計測性:閲覧数・視聴時間・遷移率などユーザー行動を可視化できるため、スピーディな効果検証と改善がおこなえる

特に今回ご依頼いただいた海上保安庁様のような公的機関や社会性の高い職種の場合、まず職業の存在や意義を知ってもらうことが第一歩であり、SNSという日常の延長に情報を届けられる仕組みが、採用活動において不可欠な選択肢になりつつあります。

採用を目的としたSNS広告配信のポイント

SNS広告を採用活動に効果的に活用するポイントを3点解説します。

ポイント①:「誰に何を届けるか」を明確化する

SNS広告を採用活動に活用する際に最も重要なのは「誰に」「何を」届けるかをあらかじめ明確にすることなので、自社がどのような人材を求めているのか、人物像=ペルソナを具体化することが出発点となります。

以下は主なターゲット設定の例です。

  • 新卒採用(例:理系の大学4年生、研究職志望)
  • 第二新卒(例:社会人経験1~3年、地方在住のUターン希望者)
  • 中途採用(例:即戦力の営業経験者、マネジメント層を目指す30代)
  • 専門職採用(例:デザイナー職に興味のある20代前半、制作実績あり)
  • 公務員志望層(例:安定志向で社会貢献意識の高い若年層)
  • 潜在層(例:すぐ転職は考えていないが、業界に関心のある層)

職場の雰囲気を伝えるのか、社会的意義に訴えるのか、キャリアパスを示すのか、といったペルソナごとに伝えたいメッセージも変化します。

SNS広告においては必ずしも「採用数」だけを指標にせず、以下のような多様なKPIを設定することが可能です。

  • 応募完了数(CV)
  • 説明会予約数(CV)
  • 書類選考率
  • 面接通過率
  • 内定承諾率
  • 動画の再生数(15秒以上再生、完了率など)
  • 広告のクリック数(CTR)

SNS広告配信を成功させるために、「どの指標を追い、どの段階で成果とするか」を広告配信前に明確にしておく必要があります。

ポイント②:目的に適した媒体を選定する

広告の効果は配信する媒体の特性に大きく左右されるため、ターゲットや配信目的に合わせた媒体選定が欠かせません。

主な選定の基準となるのはユーザー層とターゲティング精度です。

年代別SNSの利用時間の図

(参考:令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書

Instagram(Meta広告)は20〜30代の若年層に強く、若手人材の採用と相性がよい媒体です。

ターゲティングとしてはMetaのAIに最適化を任せる「ブロード配信」が主流で、細かい設定をしすぎずに任せたほうが成果が出やすい傾向にあります。

限られた予算内で応募数を増やしたい場合には、Instagramへの集中配信が効果的です。

YouTube広告は全年代にリーチでき認知拡大には適していますが、応募を直接促すにはやや不向きなため、詳細ターゲティングなどを工夫しながら活用することが求められます。

参考として下記はGoogle広告・Instagram広告・YouTube広告を比較した表です。

▼広告媒体比較
媒体 強み 弱み
Google広告 能動的に検索して流入するので、業界や職種に対する志望度や熱量が高い応募者が多い ユーザーが検索しないと広告が表示されないため、場合によっては認知施策と組み合わせる
Instagram広告 20代を中心に利用率が高く、主要なSNS媒体で配信ターゲティングの精度が高い Instagramユーザーは男性:女性=4:6と女性の比率が高く、業種や職種によってはマッチしづらい可能性がある
YouTube広告 性別や世代を問わず幅広く利用されており、動画で訴求できるため、静止画よりもメッセージが届けやすい ユーザーが有料プランであるYouTube Premiumに加入していた場合、広告が表示されない

限られた予算ではターゲットに最も合う媒体に絞るのが基本ですが、例えば100万円以上の予算がある場合は、複数媒体を組み合わせて、エントリー増加と認知拡大の相乗効果を狙うなどといった選択肢もあります。

ポイント③:クリエイティブと遷移先URLを最適化する

SNS広告の効果を最大化する上で、クリエイティブ(画像・動画・コピー)と遷移先のURL(採用サイト)の設計は重要な要素です。

媒体やターゲティングが適切でも、最初に目にする広告の印象やその後の導線設計が弱ければ応募には繋がらないためです。

クリエイティブは「誰に向けて、何を伝えるか」を明確にした上で設計することが基本です。

求職者が仕事に対して重視するポイントは、「安定性」「働きやすさ」「成長機会」「社会的意義」「人間関係の雰囲気」など、職種やライフステージによって異なるため、対象の人材に合わせたビジュアルやコピーを用いることで、より刺さりやすくなります。

LINEヤフーの媒体資料によると、採用目的で広告を配信する際のクリエイティブ作成のポイントは以下の5点です。

人材用クリエイティブのポイント

  • 表形式で情報を整理
  • 具体的なメリット・ベネフィットの提示
  • 訴求ポイントを絞る
  • 働いている様子の画像を載せる
  • 職種を明記する

(参照:クリエイティブ事例集 2025年7月号 LINEヤフー株式会社

採用広告の場合、一度で応募に至るケースは稀であり、興味を持った段階のユーザーを次のアクションに進ませる設計が重要です。

広告から遷移する先のURLは、広告で示したメッセージと内容がスムーズに連動していることが必須条件となります。

ランディングページでは以下の点を意識してCVR改善を目指します。

  • 広告で使用したキーワードやトーンをLPでも反映させる
  • スマホ表示に最適化し、応募や説明会予約などのCTAを明確に配置する
  • 動画や社員の声など、情報の信頼性を高めるコンテンツを盛り込む
  • 読み込み速度や導線の分かりやすさにも注意する

クリエイティブと遷移先は配信後も改善を重ねることが重要で、クリック率・滞在時間・離脱率・CVRなどをもとに「どこで離脱しているのか」「何がハードルになっているのか」を可視化しながら最適化を図ります。

配信後の効果測定と改善のポイント

広告は出して終わりではなく、出したあとの効果測定と改善が欠かせません。

ポイント①:適した媒体を見極める

SNS広告を活用した採用活動では、配信前にユーザー層や媒体特性をもとに媒体を選定します。

実際に配信してみないと分からないことも多いため初期の仮説に固執せず、検証と改善を繰り返しながら「自社に合った媒体」を見極めていく姿勢が重要です。

弊社で採用を目的として複数の媒体で検証した結果は下記のとおりです。

▼弊社運用事例
媒体 配信期間 成果 課題・備考
Google広告 1週間 × 検索ニーズが少なく、インテントマッチによる無関係語句の拡張
Instagram広告 約3ヶ月 年齢および地域ターゲティング、AIによる広告配信精度
Pinterest広告 約2ヶ月 広告とオーガニックの見た目の酷似による一定の誤タップが発生

以上の結果から、Instagram広告に絞って配信をおこないました。

上記のように、一度配信を開始した後でも効果を見ながら媒体の追加・停止は可能なので、配信結果に応じて柔軟に見直すことを前提に運用するのをおすすめします。

ポイント②:地域設定を見直す

SNS広告の配信において、地域設定は成果に直結する重要な要素です。

採用広告では、「ターゲットが実際に通勤可能かどうか」が応募に大きく影響するため、配信エリアの設定を見直すだけで効果が改善するケースもあります。

近年コロナ禍以降に一時進んだリモートワーク推奨の流れは落ち着き、フルリモートから出社回帰にシフトする企業が増加しています。

従来のように全国配信や広域配信をおこなうよりも出社可能な範囲に絞った配信が有効です。

広域配信から出社可能圏内へのエリア縮小の図

例えば本社が都内の場合、「1都3県」や「関東一円」といった設定ではなく、実際に出社しやすいエリアに限定して配信することで、費用対効果の改善に繋がります。

ポイント③:ターゲティング精度を改善する

採用活動におけるSNS広告の難しさは、CV(応募完了)の段階では採用に結びつくかどうか判断できない点にあります。

ECサイトのように「購入=成果」とならず、応募後に履歴書提出・面接参加・内定受諾など複数のステップがあるため、数だけを最適化してしまうと質が担保されないという課題があります。

実際に弊社でもInstagram広告を配信した際、応募者のうち履歴書提出まで進んだのは約50%に留まり、最終的な人材の質には改善の余地が残る結果となりました。

Meta広告はコンバージョン数を最大化するように機械学習が進むため「応募しやすいが採用には繋がらないユーザー」ばかりにリーチされるリスクがあります。

このような場合には、以下のようなターゲティング改善が有効です。

配信ターゲティングの改善ポイント

  • 詳細ターゲットを設定する
  • 質の高いCVリストを登録する(1,000件以上)
  • 広告セットを停止・再設定する

Meta広告は原則AIに任せたブロード配信が推奨されますが、応募の質が明らかに低い場合は、職種や関心ごとに絞った詳細ターゲティングが効果的です。

面接通過者など質の良いコンバージョンデータをリスト化してアップロードし、類似ユーザーに配信する手法も有効ですが、ある程度の件数(目安として1,000件)が必要です。

一度誤った方向に学習された広告セットは、停止して新規に立ち上げることで学習のリセットをすることも可能です。

採用におけるSNS広告は、「誰に届いているか」が成果に直結するため、ターゲティングの違和感に気づいたら、早めの見直しが重要です。

最後に

今回はSNS広告を用いた採用活動におけるポイント・配信の改善方法をまとめました。

本記事の内容を踏まえて広告運用をおこなうことで、より効果的に採用活動をおこなえるのではないかと思います。

review

人口減少により採用活動が難しくなっている現在、従来の採用媒体と比較して情報が埋もれにくく、ターゲットに対して積極的にアプローチできるSNS広告を検討される方も多いのではないでしょうか。

YouTubeではマス広告的に広く認知拡大が可能、Instagramでは応募数増加が期待できますが、採用目的でのSNS広告配信は、管理画面上ではCV(応募完了)が発生していても、実際の採用に繋がらないなど乖離が起きやすいため、ターゲティングや設計に工夫が必要です。

弊社では、採用目的に特化したSNS広告配信を複数の媒体で経験しており、お客様のご予算や目的に応じた最適なご提案が可能です。自社に合ったSNS広告を活用して採用活動を強化したいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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